ワクチン接種緊急促進事業について
副会長 早野 昌毅
ワクチン後進国と言われて久しいが、ヒトパピローマウイルス(HPV)、インフルエンザ菌b型(ヒブ)と肺炎球菌(PCV)の3種のワクチンの接種緊急促進事業が今年になって始まった。定期接種化を視野に入れたこれらの予防接種を推進するために、任意接種にも拘わらず全額公費助成で接種を行なうものである。この3種のワクチンが加わったことにより、WHOがすべての地域に推奨する10種類の疾病に対するワクチンが、日本でもやっとラインナップが揃ったことになる。
ヒブやPCVワクチン接種は定期接種のDPTやBCG、ポリオの接種時期と重なり、適切な時期に免疫をつけるには同時接種が避けられない。しかし、現在の予防接種法では同時接種は特別な理由がない限り認められていない。私が所属する地域では任意接種であるヒブとPCVワクチンは定期接種とも同時接種を認めるが、定期接種同士の同時接種は現状では認められないとの見解である。市町村によって見解は異なるが、この事業を円滑に推進するには同時接種に法的根拠を示す法改正や、欧米のように5~6種の多価混合ワクチンやポリオ不活化ワクチン導入により接種回数を減らすことも必要である。
最近の小児科外来では予防接種の占める割合は多くなってきており、接種料金の設定について行政との交渉は重要である。接種料金については任意接種にも拘わらず国が基準価格を示した。費用負担が増加する市町村は従来の接種料金設定方法を採用せず国の基準料金に従い接種料金を設定した。3種のワクチンはいずれも輸入ワクチンで高価であるが、円高対応の事業であるにも拘わらずワクチン価格は一向に下がらない。今後、この事業によるワクチン需要の増加に伴い価格が下がることが予想されるが、その時には市町村は接種料金の減額を申し出ることもありえる。現に、同時接種だから診察料金はまとめて1回分にしようとする動きもあり、小児科診療所の経営にとっては頭の痛い問題です。
この事業による直接効果だけでなく集団免疫効果のため感染症が主流の小児科診療所は益々平穏になり、診療所の存続や後継小児科医の確保のためにも現在の価格設定方法の見直しやHBワクチンのように健康保険給付なども検討しなければならない。
2011.06.15

